追放 悪役 令嬢 の 旦那 様。 【5/7追記】追放悪役令嬢の旦那様、続刊決定しました!|古森きりの活動報告

追放悪役令嬢の旦那様 (ツギクルブックス)

追放 悪役 令嬢 の 旦那 様

俺の名前はユーフラン・ディタリエール・ベイリー。 法を司る法官長という職に就く父を持つ、いわゆる伯爵家令息というやつである。 そんな俺はとんでもない女に騙された。 その話はその時点で内々のものであり、彼女はおろか陛下や彼女の両親、俺の両親にもまだ話されていない。 側から聞けば世間話の中の冗談のようなものだっただろう。 だが、その眼は本気のそれである。 なによりその話を持ち出したのは王太子。 相手は公爵家のご令嬢。 身分的には問題ない。 俺も貴族の端くれ。 この歳でえり好みし過ぎて婚約者が決まっていない事も、親に顔を合わせる度につっつかれてきた。 そろそろ決めなければ行き遅れを押しつけられかねないから、見目が美しく身分が良いなら文句もない。 まして、お古とはいえ王太子の元婚約者だからな。 だが、王子が新しい婚約者に選んだ女は問題だ。 なんでも『聖なる輝き』を持つ守護竜の愛子なのだという。 竜は国の守護者であり、戦が起きれば国を守る盾であり矛である。 そんな守護竜は『聖なる輝き』と呼ばれる特別な魔力を持つ者を慈しみ、守るもの。 つまり、国には必ず『聖なる輝き』を持つ者……守護竜の愛子がいなければならない。 その守護竜の愛子を蔑ろにしたり、雑に扱えば国は見限られて滅んでしまう。 そう、そんな女を、王太子アレファルドは選んだのだ。 だから、誰も反対しない。 出来るはずもない。 …………だから、俺は頭を抱えている。 アレファルドが……そりゃあ、婚約破棄をする前提で接してきた元婚約者、公爵令嬢エラーナ・ルースフェット・フォーサイスを卒業パーティーの真っ只中に突き飛ばし、高らかに以下のような宣言を全員の前で……国王陛下や宰相である彼女の父親の前で行った事に! 「この毒婦め! リファナにしてきた度重なる無礼を、俺が知らないとでも思ったか!」 「なっ……!」 「貴様の顔を見るのも不快だ! 今日限りで貴様との婚約は破棄させてもらう! リファナへの度重なる悪質な虐めの数々も、しっかりと償わせるからな!」 「お、お待ちください、殿下! 悪いのはその女ではありませんか! いくら『聖なる輝き』を持つ守護竜の愛子だからって……殿下の婚約者はこのわたくし……」 「黙れ! 貴様のその傲慢な態度がうんざりだと言っている! 去れ! 顔も見たくない!」 「……で、んか……」 突き飛ばされた紫のドレスの女。 アレファルドの婚約者……いや、元婚約者か……エラーナは、身を震わせ、拳を握り締め、唇を噛み、人を呪い殺しそうなほどにアレファルドに肩を抱かれたリファナを睨みつけていた。 その場の誰も彼女に手を差し伸べる事はなく、扇子の合間から笑いを堪える令嬢まで見受けられる始末。 更に後ろの方からは「悪役令嬢もおしまいね」と笑いを隠さない者までいた。 次第に広がる冷笑。 今にもキレそうな赤い顔の宰相を王や騎士団長が抑えるというシュールな光景。 そんな中、突き飛ばされたエラーナ嬢の表情が笑顔に変わり、よろよろと立ち上がると……あまりにも美しいお辞儀をした。 「分かりましたわ。 殿下がそこまで仰るなら、わたくしもこの婚約は白紙に戻して頂いて構いません。 では、破棄の手続きがありますので本日は失礼致しますわ!」 そう言って颯爽と立ち去ろうとする。 笑顔は崩す事もなく、出入り口へ向かってヒールを鳴らす。 だが、急にがくらりとバランスを崩した。 危ない、と思ったら体が動く。 俺は気づけば、その腕を掴み、彼女を支えていた。 「おっと。 転んだ時に足でも挫いたかい?」 「っ! ど、どなたっ」 「ユーフラン・ディタリエール・ベイリー。 おいおい、一応同じクラスだぜ?」 「同じクラス? ……っう?」 「おい、本当に大丈夫か?」 頭を抱えるエラーナ嬢。 顔色はどんどん悪くなる。 そんな彼女をジロジロ不躾に眺める眼差しは、減る様子がない。 段々とそんな連中に腹が立ってきて、じろりと睨み返す。 さっと目を逸らす者、さり気なさを装い、横の者に話しかける者……。 彼らを眺めつつアレファルドを見ると、なんと何事もなかったかのようにリファナと笑い合っていた。 おいおい……王子や、マジか。 もうエラーナ嬢の事など頭にないのか。 カッカした顔の宰相様は、こちらを先ほどのエラーナ嬢のように睨んでいるので頷いてみせた。 やれやれ、変なところ受け継いでんなぁ、このお嬢さん。 「わ、わたくしに構うと貴方まで立場が悪くなるんじゃありせんの」 「あれ、俺の心配してくれんの〜。 やーさしー」 「っ!」 「いいから、ほら。 最後まで気張るんだろう?」 「…………」 俺の腕を掴みながら、足の痛みなどおくびにも出さず会場をあとにする。 最後にも見事なカテーシーを披露して立ち去った。 扉が閉まると、糸が切れたように座り込むエラーナ。 「……………………」 「馬車を手配しよう。 ここで待つか? それとも……」 「……玄関ホールまで……参りますわ……」 「オーケー。 頑張りな」 「!」 手を差し出す。 かなり驚いた顔をされた。 紳士が淑女に手を差し伸べる事は、このご令嬢にはそんなに奇妙な事なのだろうか。 「……理解に苦しみます。 貴方はご自分の立場が——」 「アレファルドは『友人』だ。 ……友がやった事にしては、些か気分が悪いと感じたがな。 ……目の前に立てない淑女がいたら、手を差し伸べる。 俺は紳士だぜ? だろう?」 「…………。 そうね」 手を重ねた。 彼女とアレファルドは幼少期から親に定められた婚約者同士。 だから、社交界で何度かエラーナ嬢とはダンスを踊った事も、あるんだが……。 「さあ、もう一踏ん張り頑張れ」 「わ、分かっているわ」 彼女はアレファルドしか見えていないんだな。 俺の事など眼中にもない。 覚えられてさえいないとは……。 王太子の婚約者としてそれはそれでいかがなものかと思うけど。 ……それほどまでに……君はアレファルドに夢中だったという事にしておこう。 その晩は彼女を家に送り届け解散。 問題はその翌朝。 朝食を食べている際中、親父が深い溜息を吐きながらとんでもない事を口にした。 「エラーナ嬢と結婚しろ? 俺が彼女と? はあ?」 「はあ、じゃ、ない。 ……宰相はカンカンだ。 ……陛下も頭を抱えている。 ……はあ、とんでもない事になったものだ……」 「…………」 肉をフォークで切り、口に運ぶ。 そうだろう、そうだろう。 あれでは完全に宰相が王太子アレファルドの敵に回ったも同然だ。 この国の王子はアレファルドのみ。 他に兄弟もいないので、アレファルドはなかなかに甘やかされて育っている。 俺は弟が五人いるが、ぶっちゃけ三男のクールガンが一番優秀だ。 親父も跡取りにはクールガンを据えたいと考えているはず。 うちの国は跡取り指名制なので、優秀な息子を跡取りに出来る。 とはいえ、次男ルースは十三歳、三男クールガンは八歳……その下も、五歳、三歳、生後半年、とまだまだガキ。 親父としてはしばらく俺を代理として使い、弟たちが使い物になるようになったあとクールガンに本格的に継がせるつもりだろう。 ああ、いや、正確にはそのつもりだったはずだ。 この、今の親父の様子を見るにそうもいかなくなったようだな。 「だが相手が『聖なる輝き』を持つ乙女では仕方ないんじゃないか?」 「そうだ。 それがまた厄介なのだ……」 「今更囲い込みも出来ないだろうしなぁ」 「えぇい……、そこまで分かっていたならなぜなにもせず見ていた? お前の事だから、なにかしら立ち回る事も出来たのではないか?」 「おいおい、親父。 買い被りすぎだし、一伯爵家の俺に大層な役目を求めすぎだぜ。 そーゆーのはもっと上のお家の『ご学友』たちの仕事だろう。 まあ、まとめて射止められていたから、俺も手が出せなかった。 以上」 「…………。 それは本当か?」 「残念ながらー。 あと俺、この件は親父や陛下や宰相に報告したぜ? なんで忘れてんの?」 「っ! まさか! ざ、戯言かと思ったのだ!」 「…………」 じとりと睨むとさすがに申し訳なさそうな顔をされた。 謝られたりはなかったけれど。 ……まあ、そうなんだよな。 あのリファナ嬢は、恐ろしい事に守護竜と王太子アレファルド以外にも側近候補であり俺と同じく『友人』の公爵家のスターレット、ニックス、カーズを骨抜きにしたのだ。 見事に地位の高い令息ばかり。 俺はエラーナ嬢と同じく別クラスだったので、リファナ嬢と関わりはなかった。 しかし、エラーナ嬢がリファナ嬢へ嫉妬から色々嫌がらせをしている、という噂は耳に入っていたりもする。 その真偽については興味もない。 なぜなら、彼女以外……スターレット、ニックス、カーズの婚約者たちもリファナ嬢を憎々しく思って悪口を言っていたのを聞いていたからだ。 そして、そんな彼女たちも守護竜の怒りにはとてもじゃないが触れたくはないだろう。 エラーナ嬢だってそうだ。 だから……多分彼女たちか、あるいは別な勢力が『リファナ嬢にエラーナ嬢たちが嫌がらせをしている』と王子たちに耳打ちした。 それだけで、あの盲目になった王子たちは『敵』を排除しようとする。 ついでにエラーナ嬢は令嬢たちの中では地位も高いし高飛車で良い噂を聞かなかったから、よい|的《まと》になった事だろう。 そう、俺も関わらなければ……その的に収まる事はない。 巻き込まれる事はなかった。 「んで、話を戻すが俺とエラーナ嬢との結婚話はずいぶん唐突だな? 昨日の晩支えて家まで送っただけなのに」 「言っただろう、宰相がカンカンなのだ。 ……陛下としても、早々に婚約者を彼女に宛行いたかったのだ。 よりにもよってお前が彼女を支え起こして連れて行くから、目をつけられたのだ」 「あっそう。 まあ、俺は構わねーけど」 「ああぁ……! お前なら! そう! 言うと思ったがぁ!」 頭を抱える親父。 あー肉美味しかった。 「最後まで聞け! アレファルド殿下はエラーナ嬢を国外追放すると陛下に進言している!」 「マジで? そこまでするぅ?」 「守護竜様のご機嫌を損ねぬ為だそうだ。 守護竜様がどの程度、エラーナ嬢に対してご存じなのかは分からない。 だが万が一エラーナ嬢のリファナ嬢への虐めの話が本当なら、陛下や宰相も庇いきれん。 ……わしもそればかりは殿下の肩を持たねばならん」 「ふむ……」 つまり、守護竜がガチギレしていれば『聖なる輝き』を持つ乙女を蔑ろにした、と思われ国の守護竜が厄災に変わる可能性がある。 それは……その『可能性』は脅威だ。 守護竜のご機嫌取りの為に、エラーナ嬢を国外追放する、と。 まあ、この国の守護竜の重要性を考えると妥当。 問題はエラーナ嬢のリファナ嬢への虐めの真偽が不明瞭というところだが……。 リファナ嬢はそれに関してなにも言っていなかった。 確認も取らないつもりなのだろうか。 俺が知る限り、エラーナ嬢や他の婚約者の令嬢たちはリファナ嬢へ虐めなど行っていない。 どれほど腹立たしく思っても、リファナ嬢が『聖なる輝き』を持つ守護竜の愛子である以上、貴族は手が出せないのだ。 ……まさかとは思うが、あの『聖なる輝き』を持つ乙女様は、エラーナ嬢がどうなろうと知ったこっちゃねぇと? 「……………………」 どっちが毒婦だ、そりゃあ。

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追放悪役令嬢の旦那様

追放 悪役 令嬢 の 旦那 様

レビュー時点で本編は完結済み。 この小説は過去のレビューが示す通り、基本的に目新しい要素は無い。 しかし、それにも関わらずこの小説はとても楽しい。 語り口は青年貴族の方だが、物語の中心(つまり主人公)は令嬢である。 青年は異常な職人技術を持つが、令嬢なくしてそのよさは発揮されない。 新たな人脈も令嬢抜きには得られなかった。 にも関わらず、なろうではよくある「令嬢サイド」と言ったものは無い。 全編を通して「青年貴族サイド」の外伝である。 そのため令嬢の直接的な心理描写は無く、心境変化は全て青年の主観を通して見ていくことになるのだが、青年は語り手にも関わらず控えめに言って変わり者であり、読んでて飽きない。 ありきたりな話に飽きた人にほどおすすめしたい作品である。 正直言うと序盤はテンプレだなぁって思ってたました。 ……でも、後半になるにつれて敵役の悪辣さ、主人公の技能チートっぷりにお嬢様の持ち込み知識、そして…互いの関係性の変化。 様々な非日常がすっきり収まっているので読んでいて心地良い。 要素の殆どは二番煎じもいいところ……だが、それは何度も掘り下げられてから生まれた利点だという事であり、この作品はそれらの要素が過不足なくパズルの様に合致している。 総合評価でいえば、地の文さえ増えれば申し分なし! 内容的には…少しずつ環境適応し、主人公を意識していくヒロインと不遇な環境から解放され、ヒロインとの生活の中で少しずつ幸福を噛み締めていく主人公。 この異質な二人の変化を並べられている事でいい味が出ています。 初心なくらいがちょうどいい。 そんな感じの恋愛物語です。

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レビュー時点で本編は完結済み。 この小説は過去のレビューが示す通り、基本的に目新しい要素は無い。 しかし、それにも関わらずこの小説はとても楽しい。 語り口は青年貴族の方だが、物語の中心(つまり主人公)は令嬢である。 青年は異常な職人技術を持つが、令嬢なくしてそのよさは発揮されない。 新たな人脈も令嬢抜きには得られなかった。 にも関わらず、なろうではよくある「令嬢サイド」と言ったものは無い。 全編を通して「青年貴族サイド」の外伝である。 そのため令嬢の直接的な心理描写は無く、心境変化は全て青年の主観を通して見ていくことになるのだが、青年は語り手にも関わらず控えめに言って変わり者であり、読んでて飽きない。 ありきたりな話に飽きた人にほどおすすめしたい作品である。 正直言うと序盤はテンプレだなぁって思ってたました。 ……でも、後半になるにつれて敵役の悪辣さ、主人公の技能チートっぷりにお嬢様の持ち込み知識、そして…互いの関係性の変化。 様々な非日常がすっきり収まっているので読んでいて心地良い。 要素の殆どは二番煎じもいいところ……だが、それは何度も掘り下げられてから生まれた利点だという事であり、この作品はそれらの要素が過不足なくパズルの様に合致している。 総合評価でいえば、地の文さえ増えれば申し分なし! 内容的には…少しずつ環境適応し、主人公を意識していくヒロインと不遇な環境から解放され、ヒロインとの生活の中で少しずつ幸福を噛み締めていく主人公。 この異質な二人の変化を並べられている事でいい味が出ています。 初心なくらいがちょうどいい。 そんな感じの恋愛物語です。

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